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向井 将一; 上野 文義
JNC TN9400 2000-017, 10 Pages, 2000/03
キャビティの生成・成長挙動に関する研究は,クリープ試験により得られた破断後の試験片の破面観察,あるいは中断試験で得られた試料を観察することにより行われることが多いが,結晶粒界上に発生した1ミクロン程度のキャビティの成長挙動を連続観察により経時的に把握することは容易ではない.数値計算によるシミュレーションは観察が困難な材料内部の局所的な挙動を連続的に追跡できるため,キャビティの成長挙動を検討する上で有効な手段となることが考えられる.本研究では,結晶粒界上に発生したキャビティの成長挙動について拡散方程式を用いた数値シミュレーションを試み,表面拡散/粒界拡散,応力等の因子がキャビティの成長におよぼす影響について以下の知見を得た.(1) 粒界拡散が表面拡散に比べ十分大きい場合には,キャビティはき裂形状に遷移する.一方,表面拡散が粒界拡散に比べ十分大きい場合には,キャビティは初期形状を保ちながら成長する.(2)粒界拡散が表面拡散に比べ十分大きい場合には,粒界に作用する垂直応力に誘起された粒界拡散によりキャビティ先端部付近の成長速度が著しく加速される.(3)表面拡散が粒界拡散に比べ十分大きい場合には,キャビティ表面での化学ポテンシャルの分布はほぼ均一であるが,粒界拡散が表面拡散に比べ大きくなるにつれて,キャビティ先端部での化学ポテンシャルの勾配が大きくなる.
神田 北斗; 山県 一郎; 堂野前 貴子; 赤坂 尚昭
JNC TN9400 2000-046, 24 Pages, 2000/02
オーステナイトステンレス鋼では照射により、溶質原子が表面や結晶粒界等に偏析し、合金組成が局所的に変化する事が知られている。粒界偏析挙動を詳細に調べ、理解するために高速炉炉心材料として開発中であるPNC1520の基本合金系であるFe-15Cr-20Ni合金に、原子サイズの違いを考慮したSi,Moを各々添加したモデル合金について照射誘起偏析を検討した。高速実験炉「常陽」により476、3.510の26乗n/mの2乗(E0.1MeV)の条件で照射された試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)とエネルギー分散型X線分光分析装置(EDS)により微細組織の観察および溶質濃度を測定した。照射誘起結晶粒界偏析挙動は概ね溶質原子のサイズ効果に従っており、Feよりサイズの大きな(oversize)原子は結晶粒界で枯渇し、小さな(undersize)原子は濃化した。またボイド表面における偏析は結晶粒界とほぼ同等であり、析出物界面における偏析はこれらよりも大きい傾向を示した。また粒界によっては粒界近傍にボイドの存在しないボイド欠乏帯が存在していた。その生成理由の一つとして粒界移動現象によりボイドが掃き出されたことが考えられる。
石塚 悦男; 河村 弘; 寺井 隆幸*; 田中 知*; 宇田 実*
Fusion Technology 1998, 2, p.1281 - 1284, 1998/00
結晶粒径の異なるベリリウムをヘリウム生成量が約1000appmとなるまでJMTRで中性子照射し、トリチウム放出率測定実験を実施して、トリチウム放出特性に及ぼす結晶粒界の影響を調べた。この結果、結晶粒径の大きい試料の見掛けの拡張係数は、結晶粒径の小さい試料より大きく、粒界にヘリウムバブルが生成しても変わらないことが明らかとなった。結晶粒径の小さい試料は、粒界のヘリウムバブル影響を大きく受け、低温ではトラップサイトとして働き、高温では連結等によりトリチウム放出速度を増加させることが明らかとなった。また、ヘリウムバブル連結の効果により、見掛けの拡散係数が2桁程度大きくなることが明らかとなった。
小野 興太郎*; 古野 茂実; 北條 喜一; 北野 保行*
Microstructures and Functions of Materials (ICMFM 96), 0, p.273 - 276, 1996/00
アルミニウム中の結晶粒界でのヘリウムバブルの移動挙動を電子顕微鏡その場観察で調べた。バブルは粒界転位に沿って一次元的移動をすること、また大傾角粒界上でのバブル移動の拡散係数は粒内のそれの10倍以上であることを明らかにした。
白石 健介; 坂本 宏*; 弥野 光一*; 乙黒 靖男*
Japanese Journal of Applied Physics, 31(12A), p.L1675 - L1678, 1992/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Physics, Applied)焼結したBiPbSrCaCuOから切り出した試料に、3MeVの電子線を8.910m・Sの線量率で、1.810mまで室温で照射し、直流の四端子法で、0.64Tまでの磁場中の臨界電流密度を温度の関数として測定した。磁場なしで測定した臨界電流密度は、45K以下の温度で電子線照射によって上昇する。この照射の効果は測定温度が低いほど著しい。また、磁場中で測定した臨界電流密度も、6.010mまでの電子線照射によって約50K以下の温度で上昇する。この電子線照射の効果は測定温度が低いほど、また0.16Tまでの磁場中では磁場が弱いほど著しい。電子線照射が1.810mになると0.16Tで測定した臨界電流密度は約50K以下の温度では照射前の値より小さくなる。このような電子線照射による臨界電流密度の変化は、結晶粒内の照射欠陥のほか、結晶粒界に生じたアモルファス層が磁束線のピン止め点として作用することによる。
白石 健介*; 坂本 宏*; 弥野 光一*; 乙黒 靖男*
Japanese Journal of Applied Physics, 31(8A), p.L1037 - L1040, 1992/08
被引用回数:5 パーセンタイル:32.8(Physics, Applied)結晶したBiPbSrCaCuOに、2.4810m・sの線束密度で、3MeVの電子線を2.010mまで室温で照射し、直流四端子法によって臨界電流密度を温度の関数として測定した。外部磁場をかけないと、1.010mまで照射すると、65K以下の臨界電流密度が上昇する。この電子線照射の効果は測定温度が低いほど顕著である。この照射試料に0.04Tの外部磁場をかけて臨界電流密度を測定すると、25K以下の温度で僅かに臨界電流密度は上昇するが、0.8Tあるいはそれ以上の磁場中での臨界電流密度は、照射前の値に比べて小さくなる。電子線の照射量が2.010mになると外部磁場の有無にかかわらず、比較的低温度で測定した臨界電流密度は低下する。これらの電子線照射効果は、照射欠陥による磁束線のピン止め点の導入と結晶粒界などの界面にアモルファス層が生成、成長する過程が競合して起こることによるものであると考えられる。
鈴木 建次; 赤堀 光雄; 柴 是行
粉体および粉末冶金, 30(5), p.178 - 183, 1983/00
試料表面に置いた核分裂性物質(Al-U合金箔)から熱中性子照射により生じた核分裂片で結晶粒径の異なる酸化トリウムを反跳照射し、照射後の格子定数変化に及ぼす結晶粒径の影響を検討した。核分裂片照射量の増加に伴っていずれの試料とも格子定数の変化率は約110核分裂片・cm近傍から増加し、約510核分裂片・cm以上で飽和する。結晶粒径が4.0mから19.4mに増加するに伴って飽和値は約0.07%から約0.18%まで増加する。2段解析法に基づく飽和関数で格子定数変化の実測値を近似することにより格子欠陥濃度を検討した結果、これらの試料における飽和値の差異は酸化トリウム燃料核の結晶粒界が核分裂片照射により生じた格子欠陥の消滅源として働くことに起因するものと考えられる。照射後の等時焼鈍実験によれば、いずれの試料とも焼鈍温度の増加に伴って回復が始まり、その回復は400C近傍から急激になり、完全に回復する温度は結晶粒径の小さいもの程低い。